父は鉄道マンで引退して7年、当時69歳でした。パチンコと囲碁に明け暮れる毎日を送っていました。酒もタバコも大好きな元気な老人です。一方母は2つ年上で持病持ち、腰も痛み出して杖なしでは歩くのも大変な状態でした。しかも介護途中で自身も難病患者であることが判明します。子供は私と妹の2人です。この4人がALSなどという聞いたこともなかった病気と丸3年に渡り戦うことになったのです。
<ご注意>
・ 病は人それぞれです。現に闘病中の方など絶望は無意味です。
・ この記録を闘病と介護の参考にして下さい。但し情報は当時のもので
す。制度も変わってきており、地域によって介護サービスに違いもあり
ます。ご自身にてご確認をお願いします。
・ 登場する人物は全て実在の方々ですが、諸々影響を考慮して一部仮名
になっています。
ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis)は日本では筋萎縮性側索硬化症と呼ばれる神経難病です。残念ながら現在も確かな原因も治療法も分かっていません。大リーグのルー・ゲールック選手がこの病気になったことから、アメリカではゲーリック病などとも呼ばれています。イギリスの理論物理学者スティーブン・ホーキング博士がやはりこの病気です。
ALSは脳内の神経細胞がなんらかの理由で死滅していくニューロン障害の病気です。全身の筋肉が衰え、萎えていきます。随意筋のみ障害を受け、心臓や内臓など不随意筋は影響を受けません。手足の自由が利かなくなり、水や食事を飲み込むことも出来なくなります。最終的には肺を動かす筋肉が侵され、呼吸困難となって死に至る病気です。
一方で、ALSは脳の活動には影響を及ぼしません。病気が進行して身体が全く動かなくなってからも知覚や意識は明晰な状態を保ちます。だからこそ、ALSは恐ろしい病気だと言うことが出来ます。手も足も全く動かず、頷くことも、口も目も動かなくなったら・・・、他人の言うことは依然よく分かるにもかかわらずYesともNoとも返事を返すことが出来ないのです。恐ろしい病気です。
とは言うものの最近では様々な取り組みがなされています。人工呼吸器の発達はALSを死病から解放しました。また治療ということでも、マウスで病態を簡単に再現できるようになったことから、治療薬の研究が進んでいます。またヒトゲノムの解析が進められ原因の特定に期待が持たれています。もう一息の所まで来ているのは確かです。
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